文書作成日:2023/09/28
定期健康診断(以下、「健康診断」という)を秋に実施している企業も多いと思いますが、健康診断の費用や受診した時間の取扱い、健康診断の受診後に有所見となった場合の取扱いなどについて、会社が適切に対応ができていないケースを見かけます。そこで今回は、健康診断にまつわる疑問についてとり上げます。
健康診断は、労働安全衛生法および労働安全衛生規則において、1年以内ごとに1回(深夜業に従事する労働者等は6ヶ月ごとに1回)、定期に実施しなければならないとされていますが、この健康診断の実施対象者は、常時使用する労働者であり、正社員だけではなく、パートタイマーやアルバイトであっても、以下の要件のいずれにも該当する場合には実施することになっています。
- 無期契約の労働者や契約期間が1年以上である労働者、有期契約で契約の更新により1年以上使用することが予定される労働者、契約更新をして既に1年以上引き続き使用している労働者
- 1週間の労働時間数が、その事業場の通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である労働者
健康診断を受診するときの費用については、健康診断の実施が会社に義務付けられていることから、通達(昭和47年9月18日 基発第602号)で会社が負担すべきものとされています。なお、健康診断の受診後に有所見になった後の再検査等の費用は、会社の義務とはなっていないため、あらかじめ労使で決めることになります。
健康診断を受診するための時間に対する給与の支払いは、「労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。」と先ほどの通達に示されており、賃金を控除することなく、就業時間中に受診できる仕組みを整えている会社が多くあるかと思われます。
健康診断を受診した後には、医師等により異常がないか、異常の所見がある(有所見)かが判断され、有所見のときには、医師等から就業に関する意見を聴取することになります。具体的には下表の就業区分と就業上の措置があれば、その内容を健康診断結果へ医師等に記載してもらいます。そして、この医師等の意見を勘案し、会社がその必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じたり、医師等の意見を衛生委員会等へ報告したりするなどの対応が求められます。※表はクリックで拡大されます。
健康診断を実施し、結果を労働者に通知するのみというケースも見られますが、健康に働き続けるためには、健康診断の結果に応じた対応が求められます。労働基準監督署の調査では、有所見とされた後の医師等からの意見聴取を行っていないとして、是正勧告が行われる事例があります。いま一度、健康診断全体の流れを確認しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。